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    記憶力を強くする


    池谷裕二 IKEGAYA Yuji   大学教授/専門 神経科学・薬学
    1970年 静岡県藤枝市に生まれ。
    1989年 藤枝東高校を卒業。
    1989年 東京大学理科一類に入学。東京大学大学院薬学系研究科へ進学。
    1998年 博士号(薬学)を取得。

    東京大学薬学系研究科助手、コロンビア大学生物科学講座客員研究員、東大講師、2007年8月准教授。日本薬理学会の学術評議委員・代議員も務める。

    文部科学大臣表彰若手科学者賞、日本薬学会奨励賞、日本薬理学会学術振興賞、日本神経科学会奨励賞、創造性研究褒賞などの賞を受けている。
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    神経細胞(ニューロン)

    イタリアの解剖学者ゴルジとスペインの組織学者カハールの二人は、脳の構造を科学的に調べあげ、「神経細胞(ニューロン)」という細胞が、脳の複雑で精巧な機能を担っていることを発見しました。近代神経学の基礎を作りあげたこの二人は、その輝かしい業績が認められて1906年にノーベル賞を受賞しました。

    P 19

    神経細胞の増減

    神経細胞に増殖する能力がないということは、かつての神経科学界にとっての常識でした。しかし、海馬などの限られて脳部位では、神経細胞は増殖して数が増えたり、また反対に減ったりすることがわかってきました。

    P 37

    海馬の重要性の明確化

    海馬の重要性を初めて明確に示したのは米国の神経心理学者スコヴィルとミルナーの1957年の報告です。この報告は米国のてんかん患者HM氏のケースを臨床心理学的に詳しく検査したものでした。

    P 42

    アンモン角と歯状回

    ⊂のほうを「アンモン角」、⊃のほうを「歯状回」とよびます。
    <中略>
    アンモン角の神経細胞はピラミッドのようにとがった三角形をしていますので、「錐体細胞」とよばれています。一方歯状回の神経細胞は小さく丸いコロコロとした粒状の形をしていますので「顆粒細胞」とよばれています。

    P 50

    海馬の構造:アンモン角

    アンモン角は錐体細胞の性質にもとづいて、さらに四つの部位に分けられます。それぞれ「CA1野」「CA2野」「CA3野」「CA4野」とよばれています。この中で重要なのはCA1野とCA3野の二つの領域と歯状回を合わせた三つの部位は、神経線維でつながって連絡網を作りあげています。

    P 50

    海馬の主要三シナプス回路

    「歯状回」→「CA3野」→「CA1野」という三段階にわたる信号のやりとりは「海馬の主要三シナプス回路」といわれていて、脳の研究者にはとても有名な神経回路です。

    P 51

    神経細胞の増加:情報の入り口の歯状回

    実際、神経細胞が鍛えられて数が増えるという現象は、歯状回に特有のものです。海馬の中で増殖する能力をもっている神経細胞は歯状回の顆粒細胞だけです。顆粒細胞が増えると記憶力が増強するというわけです。歯状回は海馬への信号の入口ですから、入口の神経細胞が多いほど記憶力がよくなるということです。要するに、海馬に入ることのできる情報の揚力は「記憶力」と深い関係があるのです。

    P 54

    意識して思い出せるエピソード記憶と契機の必要な意味記憶

    エピソード記憶は1972年カナダの心理学者ダルビングによって、意味記憶は1966年に米国の心理学者キリアンによって分類されましたが、この二つの記憶の区別はとても重要です。先ほど私が「何でもいいから過去のことを思い出してください」といったときに、皆さんは自分の過去の経験(エピソード記憶)を思い出したはずです。おそらく「ワシントンはアメリカの初代大統領である」(意味記憶)を思い出した人はいないでしょう。

    P 60

    記憶の分類のまとめ:エピソード記憶以上は「顕在記憶」・意味記憶以下は「潜在記憶」

    記憶には「短期記憶」「長期記憶」がありました。そして、長期記憶にはさらに細かく「エピソード記憶」「意味記憶」「手続き記憶」「プライミング記憶」と分類されます。簡潔にまとめるとこうなります。
    1. 短期記憶   30秒から数分以内に消える記憶7個ほどの小容量
    2. 長期記憶
      1. エピソード記憶      個人の思い出
      2. 意味記憶        知識
      3. 手続き記憶       体で覚えるものごとの手順(How to)
      4. プライミング記憶     勘違いのもと? サブリミナル効果

    P 68

    海馬は「記憶する」ことには重要、「思い出す」ことには必要でない

    海馬がなくても思い出すことができるのです。海馬は「記憶する」ことには重要ですが「思い出す」ことには必要でないというわけです。

    これはとりなおさず、記憶は海馬の中に保存されているわけではないことを物語っています。つまり、海馬で作られた記憶は、海馬以外の場所に貯蔵されていると考えられるわけです。

    P 76

    情報は一ヶ月間、海馬に留まる

    入力された情報は海馬に一ヶ月ほど留まり、その中で記憶すべき情報が海馬から側頭葉に送られるのだということを理解しておいてください。

    P 80

    θ波は記憶しようという意志の表れ

    もっとも顕著にθ波が現れるのは、新しいものに出会ったり、初めての場所にいったりして、あれこれと探索しているときです。いままでに出会ったことのない初めてのものに遭遇すると、海馬はθ波を出して活動します。そして、目の前にあるものごとを海馬は記憶しようとするのです。

    P 81

    流れる電気の実体は異なる

    電気回路では流れるものは「電子」ですが、神経回路では「イオン」なのです。主に金属イオンである「ナトリウムイオン」が流れることで電気信号が伝えられています。

    P 96

    θ波を作り出すもと&うま味の成分

    神経細胞において、より実質的に重要な神経伝達物質は「アセチルコリン」と「グルタミン酸」です。

    P 105

    記憶の定義

    専門的にいえば、「記憶とは、神経回路のダイナミクスをアルゴリズムとして、シナプスの重みの空間に、外界の時空間情報を写し取ることによって内部表現が獲得されることである」と厳密に定義されています。

    P 142

    1949年に神経科学者のヘブが考えていた「ヘブの法則」

    もし、シナプス可塑性が記憶に関係するのならば、「協力性」「入力特異性」「連合性」という三つの性質を持つであろうとするこの考え方は「ヘブの法則」とよばれ、のちの脳研究者に多大な影響を与えました。

    P 154
    ※可塑性(かそせい)・・・ものに力を加えて、その形が元に戻らない性質。【例】 粘土、アルミ缶、針金など。

    LTP(long-term potentiation)

    海馬歯状回のシナプスを高い周波数で刺激すると、シナプス伝達の効率は上昇し、この現象は刺激の後、長時間持続した。

    ブリスとレモの二人はシナプス結合の増強が長期的に持続するというこの現象を「長期増強(long-term potentiation)」と名づけました。

    P 158

    重要なグルタミン酸の受容体:AMPA受容体とNMDA受容体

    AMPA:α-amino-3-hydroxy-5-methylisoxazole-4-propionic acid
    NMDA:N-methyl-D-aspartate

    P 166

    ストレスとお酒と記憶力

    動物にストレスを与えると、ホルモンのバランスが崩れ、LTPが形成されにくくなるということが知られています。つまり、ストレスは記憶力の妨げになるというわけです。また、動物にアルコールを飲ませると。LTPが弱まります。これは、酒の飲みすぎで記憶が失われる「アルコール性健忘症」とよばれる症状に相当します。

    P 179

    記憶の容量は年齢と共に増大する

    脳を詳細に調べてみると、確かに、神経細胞の総数は歳とともに減っていきますが、シナプスの数はむしろ反対に増えていくことがわかります。つまり、神経回路は年令を重ねるにしたがって増加していくのです。この事実は、若い頃よりも歳をとったほうが記憶の容量が大きくなるということを意味しています。

    P 187

    記憶力が高ければ、ストレスに強くなる

    記憶力が高ければ、ストレスからのダメージも最小限ですみますから、さらに記憶力を高めることができます。ストレスにさえ打ち勝つ強い脳を作りたいものです。

    P 197

    科学的に最も能率的な学習のための復習スケジュール

    忘却曲線を考慮にいれると、科学的にもっとも能率的な復習スケジュールは、まず一週間後に一回目、つぎにこの復習から二週間後に二回目、そして、最後に二回目の復習から一ヵ月後に三回目、というように一回の学習と三回の復習を少しずつ感覚を広くしながら二ヵ月かけて行うことです。そうすれば、海馬はその情報を必要な記憶と判断してくれます。

    P 208

    寝ること、夢を見ることは、記憶定着のため必須の過程

    寝ることは、ものごとをしっかりと覚えるための大切な行為なのです。米国の精神医学者スティックゴールドは2000年の認知神経科学雑誌に、何か新し知識や技法を身につけるためには、覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせない▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼という研究結果を発表しました。

    P 212

    天才とは努力の集積の賜物

    「天才」とは、努力が足りない凡人の妄想によって作られた言葉です。この言葉にだまされてはいけません。「99パーセントの努力と1パーセントのひらめきです」と天才エジソン自らが語ったように、「天才」とは神によって与えられた天賦の才能ではなく、血のにじむような努力の賜物なのです。

    P 223

    記憶力と分子の動き

    記憶力は「NMDA受容体」の活動と深い関係があるのです。そして、NMDA受容体にリン酸が結合すると記憶力が増強されるのです。脳科学が解き明かした記憶力の実体は、驚くべきほどに単純な分子の動きだったわけです。

    P 236

    「獲得」「固定」「再生」

    記憶は幾多の段階にわかれています。少なくとも「学習すること」「記憶をたくわえること」「思い出すこと」という三つの段階があるとされています。専門的には、これらの段階をそれぞれ「獲得」「固定」「再生」とよんでいます。

    P 252
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    プロフィール

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    Author:bookback
    1981年東京生まれ。静岡育ち。

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